大型巻線抵抗搭載の単体アッテネーター
ATT22
- ベール感を払拭した高透明音量調節器 -
大型巻線抵抗搭載の単体アッテネーター
ATT22
- ベール感を払拭した高透明音量調節器 -
標準仕様*
型式:SAA-ATT22
入出力:アンバランス1系統(RCA端子)
入力インピーダンス:3kΩ 〜 500Ω**
減衰比: -∞ 〜 -3dB
寸法:350mm×215mm×125mm
標準価格 98,000円
(部品価格等の変動を受け改定する場合があります)
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* 仕様ならびに外観は予告なく変更する場合があります。
** 前段機器から見たインピーダンスは、ツマミ位置により
最小位置の3kΩから最大位置の500Ωまで変化します。
ご参考迄にツマミ位置12時(減衰率-20dB)での
入力インピーダンスは2kΩです。3時の位置までは
1kΩ以上を維持しますので、入力インピーダンスが数100Ω一定の
スタジオ系フェーダーよりも駆動し易い負荷となっています。
お問合せ先:
○巻線抵抗方式の採用
世の大半のオーディオ機器の音量調節は、
カーボン抵抗体で行われていますが、
相対的にノイズレベルが高いカーボン素材は、
音量調節と共にモヤモヤを付加してしまいます。
加えて、
強信号に対して歪みを発生する非線形性もまた
カーボン素材の本質的な欠点です。
このような素材レベルでのモヤモヤ要因から脱却するため、
ATT22では、巻線抵抗体を採用しています。
巻線抵抗体は、
カーボンやガラス複合材等の一般的な抵抗素材に比べて
格段にノイズレベルが低く
モヤモヤのない鮮明な出音を特徴とします。
○既存のカーボンボリュームとの併用
ATT22の標準的な使い方としては、
CDプレーヤー等の音源機器とアンプの間、
或いはプリアンプとパワーアンプの間に入れて頂き、
アンプのボリュームは最大位置にして
ATT22で音量調整をして頂く形になるかと思います。
広く用いられているカーボンボリュームは、
再生音の細部を滲ませ鮮度感を損ないますが、
マイルドで聴きやすいとも言えます。
このマイルドさと釣り合う派手な音の機器類との組み合わせで
ご愛用のシステムの音質バランスが成り立っている場合には、
ATT22の導入によってそのバランスが崩れてしまうかも知れません。
その場合には、
再生音量をアンプのカーボンボリュームで主に絞るか、
ATT22で主に絞るか、
その配分を調整して最適のブレンドをお探し頂く使い方も可能です。
マイルドなカーボンから切れ味のよい巻線まで、
両極の間で音質傾向を調整可能となります。
(参考写真:分解修理中のFR-200H。奥に並ぶ円筒形の部品が巻線抵抗器)
○自然な調節カーブ
音質的には大きなアドバンテージを持つ巻線ボリュームですが、
実際には音量調節用には殆ど使われていません。
通常の巻線ボリュームを用いたのでは、
小音量域での僅かなツマミの回転で急激に音が大きくなってしまい
一方、大音量域ではツマミを回しても殆ど音量が変化しないという、
極めて不自然な操作感の音量調整になってしまうためです。
ツマミを回した時の音量変化がなだらかで自然と感じられるためには、
実は抵抗値の変化には大きなメリハリが必要で、
小音量域では緩慢に大音量域では急激に変化する必要があります。
ところが通常の巻線ボリュームは、
均一な抵抗線を均一な間隔で巻いた造りとなっており、
抵抗値の変化がどこでも一様であるため、
上述のような不自然な音量変化を生んでしまうのです。
但し、どんな抵抗素子も素材固有音からフリーではなく、
金属線を巻いた巻線抵抗の場合には、
通過音楽信号が金属的な音色を帯びる傾向があります。
これを抑制するには被覆材による制振処理が効果的ですが、
過度に制振すれば音楽信号から躍動感を奪うことにもなり、
適切にコントロールするのは非常に難しい課題です。
現代において巻線抵抗と言えば
セメント抵抗を代表格として電力用のものが殆どですが、
電力用巻線抵抗の被覆材は
耐熱性や放熱性の観点で選定されていますので、
これに微妙なオーディオ用途への適性を期待するのは酷というものです。
例えば有名なDale(現Vishay)社のNSシリーズの巻線抵抗にしても、
その被覆の制振性は、
金属色を抑えるには不足であり躍動感を維持するには過剰です。
NSシリーズをオーディオ用途に流用した例も散見されますが、
結果的に得られる音質については
良い印象をお持ちでない方も多いことと思います。
(大型巻線ボリュームとベルトドライブの連動機構)
(参考写真:Konski Kruger社製 FR-200H)
○無垢材採用の木製ケース
被覆材による制振処理が巻線抵抗器の音を左右するのは、
抵抗器としての電気信号減衰作用が、
機械的な振動と微妙に結びついているからに他なりません。
また、
巻線方式に限らずボリューム素子全般に言えることとして、
摺動接点の接触状態が振動を受けて変化すれば
電気信号にも影響が及びます。
音量調節がアンプの一つのツマミである姿を見慣れてしまうと、
これをわざわざ独立のセットとすることは
如何にも大袈裟なことに思えます。
しかし、上記のような問題点への対策として、
ボリューム素子を良質な筐体に収め振動環境を整えることには、
大きなメリットがあるのです。
○歴史的名品をリファレンスとして
巻線抵抗素子のオーディオ用途での到達点を示してくれるのが、
ヴィンテージフェーダーです。
もし機会があれば、
巻線抵抗を用いたヴィンテージフェーダーの音に触れてみてください。
かつてはオーディオ専用巻線抵抗というものが存在したのだということを
ハッキリと実感させてくれる筈です。
上図左のように回路図記号で示される可変抵抗器の場合、
摺動接点は、抵抗体に接する矢印の先の部分で、
その数は一つだけと見えます。
端子1〜3は、可変抵抗器の外部に並んで出ている固定端子です。
しかし、固定端子である端子2に束縛されていたのでは、
摺動接点が抵抗体上を移動出来ないので、
実際には上図右のように
端子2との間にもう一つ摺動接点が設けられています。
ツマミや軸と一体となって回転する摺動子と呼ばれる部品があり、
その一端が抵抗体側との摺動接点となり、
もう一端が端子2側との摺動接点となっています。
つまり可変抵抗器を通る電気信号は、
不安定な摺動接点を2回通過しなければならず、
その度に劣化いたします。
これは、ロータリースイッチの場合も
抵抗体の代わりに切り替え電極が並ぶだけで事情は全く同様です。
やはり電気信号は、摺動子と呼ばれる部品を経由して流れ、
2箇所の摺動接点を通過しますので、
固定抵抗をロータリースイッチで切り替える方式の
アッテネーター(Daven等)の中でも同様の問題が起こっています。
ところがFR-200Hの場合には、
摺動接点と端子2を柔軟な配線で繋ぐことによって、
上図左そのものの摺動接点が一つだけの構造となっています。
通過する摺動接点が半減すれば信号劣化も半分で済みますので、
ATT22も
これと同じ構造を採用することにより高い透明度を確保しています。
ATT22に採用の大型巻線ボリュームも
単独では音量調整に向かない通常の抵抗値変化特性を持っていますが、
これを2個連動させることでメリハリのある抵抗値変化を合成し、
小音量から大音量まで自然な音量変化を実現しています。
更に、完全ツインモノ構成とすることで
左右チャンネル間の信号干渉を排除しつつ、
バランス調整にも対応しています。
中でもATT22が手本としたのは、
銘品の誉れ高い独Konski Kruger社製FR-200Hです。
このヴィンテージフェーダーを通過した音は、
巻線抵抗にありがちな金属的色付けとは無縁であり、
潤いさえ感じさせてくれます。
Konski Kruger社の名前はオーディオの世界では
馴染みが薄いかと思います。
第二次大戦中に活躍した暗号機エニグマの製造元
と申し上げたほうが通りがよいかも知れません。
エニグマの解読に取り組む天才数学者チューリングの物語は、
映画『イミテーション・ゲーム』にもなりましたので、
ご存知の方も多いかと思います。
このFR-200Hは、お客様からの修理ご依頼品でしたが、
ご厚意により修理完了後も長期に渡りお借り出来ましたため、
通常ではあり得ないレベルの歴史的名品をリファレンスとして
ATT22の開発が進むこととなりました。
○吟味し研ぎ澄まされた音
ATT22の心臓部は、直径40mmの大型巻線ボリュームで構成されています。
この巻線にも制振処理を施しておりますが、
制振材の材質、厚さ、塗布法からキュアの条件に至るまで、
FR-200Hとの綿密な比較試聴を繰り返しながら吟味し最適化されています。
かくしてATT22の通過音は、
FR-200Hと同等とまでは申しませんが、
そのエッセンスを今の時代に伝えるに十分な水準に到達しております。
○摺動接点の削減
FR-200Hでもう一つ感心させられるのが、
通過信号に対する高い透明性です。
同じように巻線抵抗素子を切り替えるタイプの
EckmillerやDavenのヴィンテージフェーダーであっても
透明性においてはFR-200Hに一歩譲ることとなります。
これには摺動接点が大いに関係しているようです。
摺動接点は、移動可能な中途半端な接触状態ですから、
コネクタのようにしっかり噛み合った固定接点に比べれば、
通過信号の劣化を伴い且つ長期安定性で劣ります。
従って、信号劣化を回避し透明度を維持するためには、
信号が通過する摺動接点の数が、
一つでも少ないほうが良いことになります。
○セルフクリーニング
巻線ボリュームは長期信頼性にも優れています。
摺動接点と巻線とは硬い金属同士なので
カーボン皮膜のように容易に摩耗することがありません。
また、
表面の酸化等により一時的に接点の導通が悪化したとしても
ツマミを回した時の相互摩擦により酸化皮膜が除去され
フレッシュな表面が再生いたします。
ツマミを定常音量位置からほとんど動かさないような使い方の場合には、
時折ツマミを前後に動かして頂くことが有効なメンテナンスとなります。
ATT22の機構部は、
振動吸収性に優れた木製ベース上に組み上げられています。
大型巻線ボリュームや駆動系のシャフト、ギア等の金属部品を
この木製ベースに保持することによって、
巻線素子に伝わる微振動を和らげ通過信号に影響することを防ぐとともに、
微振動自体が金属的な音色を帯びることを防いでいます。
また製品全体をケヤキ無垢材を用いた木製ケースに収めることで、
無機的な音になり易い巻線ボリュームに木質の響きを加味し、
バランスのとれた音色にまとめ上げています。
©粋音舎2023